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友達同士

 まだ私が中学生だった頃スキだった人は一つ年上の先輩だった。
 彼も私も生徒会役員で放課後は毎日のように生徒会室でお仕事をしていた。
 彼はぶっきらぼうで愛想がなく、最初は「ヤな奴」と思っていたけど、
 一緒に過ごしているうちに優しさがみえたりしていつのまにか好きになっていた。

 彼と一緒に生徒会活動をする期間は1年間だった。
 半年くらいたった頃に好きだと自分でも気づいて、
 その時には一緒に生徒会にいられるのもあと半年という時だった。

 彼とは生徒会の中でもかなり仲がよかった。
 先輩後輩とはいっても部活とは違って「○○先輩」などとは呼ばない。
 どうしてかはわからないけれども「友達感覚でいこう♪」というような集まりだったので、
 私も年上の彼のことを呼び捨てにしてみたり、「くんづけ」で呼んでみたりしていた。

 そんな仲間だったので夏休みや冬休みになるとみんなででかけたり、
 学校の帰りに一緒に帰ったりよく友達には
 「あんたたち付き合ってるの??」といわれるような関係だった。

 私と彼は別に付き合っていたりはしなかったけれど、
 二人だけで遊びに行ったりもしていたので私はその関係で十分満足だった。
 けれども半年たって彼が仲間からいなくなるときに、
 今までのような関係でいられないことに気づいた。
 そう。今までは生徒会という器があったからこそ毎日のように一緒に帰ったり、
 帰りに寄り道したりできたのであって、
 それがなければわざわざ約束しないとそんなことはできないのだ。

 「約束しななくても会える」という関係が当たり前だった私にとって
 「約束しなければ会えない」という状況はかなり不安だった。

 いろいろ悩んだ結果、私は彼に気持ちを伝えることにした。
 気持ちを伝えて一歩前進すればきっと会うのも約束するのも容易にできるだろう。
 と思ったからだ。そして彼もたぶん私のことを好きなんじゃないかなぁ??という
 思いがあったからというのもあるけれども。

 その結果彼と私は付き合うことになった。
 初めのうちは仲良く一緒に帰ったりもしていたけれど、
 だんだんと問題が持ちあがってきた。彼の親だ。
 彼の親は両親とも教師をやっており、かなり厳しい家庭だった。
 私と彼が付き合っていることを知った親は「受験生だから」ということで反対をしてきた。

 当時中学生だった彼にとって親に反対されればなすすべはない。
 しかも彼の成績はトップクラスで北海道でもかなり有名な進学校を目指していたのだ。

 そうして私と彼は付き合っているという関係はあるものの付き合う前よりも
 もっと遠い存在になってしまった。
 電話だって付き合う前なら気軽にかけられたのに、
 付き合うということになってからは一切かけられない。会うことさえできない。

 もしもこれが付き合うという形ではなくて前のままのような友達同志なら
 こんなに規制はされなかったかもしれないし、もっと身近にいれたかもしれない。

 結局二人はそのまま私の転校という形で離れ離れになってそのまま終わった。

 どんな二人にもちょうどいい距離というのはある。
 たぶんあの時期の私と彼にとってはわざわざ付き合うという形を
 とらなかった方がよかったのだと思う。
 私と彼にとっては友達同士という距離が一番よかったのかもしれない。

 お互いにちょうどよい距離を越えてしまうとよくないと大人になった今でも思う。
 ただ距離が縮まればいいというものでもない。
 距離が近くなりすぎてダメになる恋愛もあるということを知っておいてほしいと思う。

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