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素敵な告白をするために

「この恋は叶うと思いますか?」

これはよくある質問だけど、そうやって聞かれるのが一番困る。
叶うからがんばれ、なんていうのは無責任だし、
かといってムリだからやめとけ、というのも根拠がない上に酷薄だ。
だからたいていの場合、この質問に対する結論は、
後悔しないように自分で判断してがんばれ、
という無難なところに落ち着いてしまう。

その恋がどうなるかなんて、誰にもわからない。
そりゃあある程度、状況証拠から推測はできるけれど、
たいていその状況証拠は客観的じゃないし、また十分でもない。
そりゃそうだ、なにしろ、恋の熱に浮かされたあなたが提出する状況証拠なんだから。

かといって、どうせわからないのだから考えるなと言っても、それもまたムリな話だ。
たとえあなたが、考えるな考えるなと自分に念じたところで、
それはやっぱり考えている。本人の意思に関係なく、
彼の事ばっかり考えてしまう、それが心奪われるってやつだから、しょうがない。
そんなことにエネルギーを使うのは、損だ。

僕がえらそうに言うなら、どうせそのことばかり考えているなら、
恋が叶うかどうかなんてことに煩悶せずに、
もっと考えるべき事を考えるほうがいいと思うのだ。
だからここでは、告白予定があるあなたが、何を考えるべきかについて話そう。

どうせ告白するからには、いい告白がしたいだろう。
それならまず、自分が告白されたときに、
どういうのがグラッとくるか、それを考えてみればいい。
あなたにはそれなりの魅力があって、それなりの欠点がある。
だから、あなたの恋の行方なんて、成るか否かはいつも「微妙なところ」だ。
であれば、自分が告白される立場になって考えてみればいい。
あなただって、そんなに好きじゃない相手、つきあうかどうかは
「微妙なところ」の相手でも、こんな告白されたら、
グラッといっちゃうだろうな、と思うような告白があるはずだ。
それを考えてみてほしい。

あなたが想像した、あなたがグラッとくるであろう告白は、
次のような要素が含まれているはずだ。

・ 独りよがりでなく
・ かつ情熱的で
・ ねちっこくなく
・ かつへこたれない

いかなる個性の差があれ、こういう基本要素は共通しているものだ。
そういう要素を、はたして今のあなたが持ちえているか、それを考えていくといい。

まず恋に悩むあなたは、独りよがりになりがちだ。
なぜかというと、自分の中で彼への想いが膨らみすぎて、
それにばかり気をとられてしまうからだ。
そして彼に告白するときに、あなたの想いの強さだけをごり押ししてしまう。
「あなたのことばかり考えています」「あなたのことを想うと夜も寝られません」
「胸が張り裂けそうです」「断られたら死んでしまいたいと思います」
そうやってとうとうと語ってしまう。落ち着いて考えてみてほしい。
そういう想いをごり押しするのは、揺れる彼の気持ちに対して、
わざわざハードルを高くするようなものだ。
彼は今、あなたに対して、「付き合うかどうかは微妙なところ」と思っているのに、
そんなに激しい想いをぶつけてどうしようというのだ。
彼としては、「これは気軽にイエスとはいえないな」と思うしかないではないか。

あなたが、「あなたの気持ち」をぶつけようとした時点で、
あなたは自分のことが優先的になっている。それが、独りよがりというものだ。

もっと、彼の気持ちに目を向けよう。
そしてどうすれば、彼の気持ちがぐらっとくるか。
これも、先ほどみたいに、自分が告白される側として想像すれば見えてくるだろう。
「断られたら死にます」よりも、
「あなたのその人なつっこい顔が、かわいくてしかたがない」のほうが、
あなたの心に届くのではなかろうか。
それは、伝えることの主体が、自分のことではなくて
相手のことであって、独りよがりではないからだ。

あなたの思いの強さを伝えるだけでは、独りよがりになってしまう。
だから、あなたから見た彼はどれだけステキなのか、それを伝えよう。
そのほうがきっと、彼の気持ちにグッとくる。そういうことだ。

つづいて、情熱的であるということについて。

これは、個人差のでるところだけど、
告白するときに情熱が感じられない人ってのは、結構いるものだ。
これには、少し複雑な背景がある。

というのは、その人はまず、
彼にとって重たい告白にしてはいけないということに気づいたわけだ。
そして、軽い告白にしようと、いろいろと自分の考えを煮詰めていく。
そのうちに、断られたらしょうがない、ダメ元だ、という考えに行き着く。
その結果、情熱のない告白に至るというわけだ。

彼に断られたらしょうがない、それは間違ってない。
だからといって、ダメ元とまで思ってしまうのは、
もう勝負を投げているに等しい。
そこで自分の情熱を無駄死にさせるのは、あまりいいことではない。

これも、自分が告白される立場で想像すればわかるはずだ。
「あのさ、無理だったらいいんだけど、一応好きだからさ、
もしよかったら付き合ってくれないかな」と言われるのは、どうだろう。
確かに重たくはないが、グラッとこさせるものがないのではないだろうか。
それよりは、「あなたの笑った顔がすごくかわいいから、
これから自分の手で、毎日笑わせたいと思ってる。
あなたを笑わせるために知恵を絞る毎日を過ごしたい、
そんなバカなことを真剣に考えてる」
やはりそれぐらい言われなくては、グラッとこないのではないだろうか。

ここで勘のいい人は気付いていると思うが、これは前項の、
独りよがりでないという前提に支えられている。
情熱的であっても、独りよがりだったら、それは逆効果になる。
これも告白される側として、「いつもさびしそうな顔してるから、
毎日笑わせてあげたいと思っている」、と言われたとしたら、どうだろうか。
あなたの心にはちょっとハテナマークが浮かぶんじゃないだろうか。
アタシは別にさびしくもないし、
笑わせて「あげたい」って言われてもちょっとねぇ、
そう思うだろう。

重くならないようにと、情熱を殺してしまうのも
あまりよろしくないし、かといって独りよがりな情熱は逆効果になる。
彼を主体に考えた上で、あなたのこっ恥ずかしい情熱を伝えるのがいい。
そういうことだ。

最後に、ねちっこくなく、かつへこたれないということについて。

告白において、ねちっこくなるのは一番ダサい。
あなたも告白される側として経験があるかもしれないが、こんなのが一番心を重くする。

「ごめんなさい、好きになれないから」
「・・・じゃあ、どうやったら好きになってくれる?」
「(は?)うーん、今アタシ好きな人いるし」
「・・・じゃあ、その人に振られたら考えてくれる?」
「(そういう問題でなくて)うーん、あまりお互い、合わないと思うし」
「・・・合わせるようにするから」
「アタシ束縛されるの嫌いだし」
「・・・束縛しないから」
「しつこくされると引いちゃう性格だし」
「・・・しつこくしないから」
「(今、してるだろうがッ!)・・・・・」

まったく漫才のような話だけど、こういう告白のシーンは、けっこうありがちだ。
告白する側が、あきらかに、振られる覚悟ができないままに
本番に臨んだというところだ。こんな告白を見て、
へこたれないやつだと思う人はいないだろうし、また粘り強いとも思わないだろう。
これはただ、女々しいのだ。このときの彼の本音を言葉にするなら、
「お願いお願い、振らないで振らないで、とりあえず付き合って」
その繰り返しでしかない。

へこたれないってことは、もっと別のものだ。
あなたが告白される側として、どういう「へこたれなさ」を見せられたら、
グラッとくるだろうか。あなたは、彼の告白にゴメンナサイしたものの、
内心どこかで、いいのかな断っちゃって、という不安を残している。
そこをグラッとさせる、「へこたれなさ」だ。

たとえば、こうこられたらどうだ。
「ごめんなさい、好きになれないから」
「ごめんなさい、か・・・・。よし、わかったぞ。
今日大事な告白しようというときに、僕がこのユニクロのシャツを
着てきたのが失敗だったに違いない。
また、この公園で告白というのも、ダサかった。
よし、僕は明日からバイトしてお金貯めて、ベルサーチのシャツを買う。
で、次回はお台場から出ているナイトクルーズ、その船上で告白しよう。
えーと、今日のところは、とりあえず手帳にバツ印つけとくぞ。
あなたが僕にこの手帳をバツ印で埋めさせるか、
僕が途中で投げ出すか、僕とあなたの勝負だ。
で、本当に手帳がバツ印で埋まったら、ギネスブックに申請してみるよ」

あなたの中に、断ってよかったのかな、と揺らぐ部分があれば、
そういうタフでユニークな彼の言葉はあなたの心に届くはずだ。

へこたれないというのは、どうあっても粘るとかそういうことではなく、
ただタフだってことだ。振られたぐらいで消沈しない、ウィットも失わない、
そういうタフさが、相手の心をグラッとさせる。

誰だってそうだが、付き合ってくださいといわれて、
それを断るのはそれなりに心苦しいものだ。
そして、もう一度チャンスをと言われたとしても、
もう一度断るのはさらに心苦しいから、そのチャンスも与えられなくなる。

だからこそ、へこたれずに相手に迫るからには、
相手に断ることの心苦しさを感じさせないぐらい、タフでなくてはならない。
それでこそ、相手はその熱烈さにグラッとくるのだ。


というわけで、少しクドクドとなったけど、いかがなものだろうか。
告白するにおいて、もちろん個人の個性とか場面の状況とかが絡んでくるけど、
ここで話した内容については、たいがい普遍的なものじゃないだろうか。
あなたはもともと賢い人だと思うけど、告白予定があるとなると、
誰でもバカになるものだから、ここで僕が話した与太話も、
まあ頭のどこかに留めていてくれたらいいと思う。

どれだけベストを尽くしても、届かない恋ってのはあるものだけど、
せめてあなたが、悔いのない告白ができることを祈ってます。


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