お葬式〜4歳の頃〜

隣の家が火事になったちょうど一週間後のことである。私はまた自宅へと一時帰宅していた。(家から離れていた理由については隣の家の火事参照)

その日は火事もなくすやすやと眠りについていた真夜中突然電話のベルが鳴った。当時は黒電話と呼ばれるなんの機能もないただベルが鳴って話が出来るだけの電話だったのでその音の大きさに驚いて私も起きた。

父が電話の相手と何かをしゃべったあと、突然出かけていった。一緒に自宅に来ていた祖母も事情を知っているようだったけど、私はまだ子供だったため「もう寝なさい」という祖母の言葉に従って眠りについた。

次の日朝早くに起こされ突然おでかけ用ワンピースを着せられた私は、どこに行くのかわくわくしていた。着いたところは会館である。何も楽しいことがなかったので少しがっかりしたけど、従兄弟で仲良くしていた友和がいたので私はすぐにはしゃいだ。友和とも久々に会ったので友和もはしゃいでいた。父が「2人で遊んでいなさい。」というのでその言葉の通り私と友和は走ったりかくれんぼをしたりしながらずっと遊んでいた。

実はそこは友和の妹である恵の葬儀会場だった。でも死の意味を理解していない4歳の私と3歳の友和には恵が死んだんだよ、と説明されてもなんのことだかよくわかっていなかった。ただいっぱいお客さんが来ることが嬉しかったり、いつもと違う場所でのご飯にわくわくして本当にはしゃいでいた。

ところが、夜になって友和が呼ばれて会場へと入っていった。私も一緒についていった。会場に入ると友和とその家族はちょっとした舞台のようなところに上がっていた。おじさんは何かしゃべっていて、おばさんは泣いていた。私はなんで泣いているのか全くわからなかったけど、その場の異様な雰囲気に圧倒されておとなしくしていた。

次に私たちが連れていかれたところで見たものは棺に入っている恵だった。どうして箱の中に恵が入っているのかは理解できなかったけど、友和が突然恵の棺にすがって「恵なんで起きないの?昨日からずっと寝てばっかりでしょ」と言って恵を揺さぶった。揺さぶられた恵は友和に答えることもなくただただ棺の中でじっとしていた。それを見ていた私も一緒に恵に呼びかけたけど恵は全く反応しなかった。

私たちは死の意味を理解していなかったけど、いつのまにか呼びかけながら泣いていた。そして次の日恵は棺にふたをされてどこかに運ばれていった。それが恵との別れだった。

今思えば私と友和はあのときに死の意味を言葉ではなく、本能的に理解したんだと思う。たった8ヶ月しか生きていない小さな小さな恵が私たちに教えてくれたことだ。

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